はじめに
「次に何が流行るのか、誰よりも早く察知したい」
ビジネスに関わっている方なら、一度はそんな思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。
市場の変化はとにかく速く、昨日の正解が明日には通用しない──そんなことも日常茶飯事です。
とはいえ、膨大なニュースやデータをすべて追いかけるのは現実的ではありません。
そこで頼れる存在になるのがAIです。
AIは、膨大な情報の海から“本当に見るべき波”だけを拾ってくれる、優秀なレーダーのような存在です。
この記事を読み終えるころには、情報の洪水が「宝の山」に見えるはずです。
AIと一緒に、未来を先読みする力を手に入れていきましょう。
1. 企画書作成を加速させるプロンプト20選
ここからは、すぐに使える20個のプロンプトをご紹介します。
市場調査から競合分析、そして勝てる戦略づくりまで、フェーズごとに厳選した“使える”内容ばかりです。
1-1. 市場トレンド・兆しの発見

まずは、世の中の大きな流れを捉えるところから始めましょう。
AIに広い視点で状況整理をしてもらうことで、見落としていたチャンスが浮かび上がってきます。
No.1 PEST分析による環境スキャン
- 目的:政治・経済・社会・技術の観点から、業界を取り巻く外部環境を整理する。
1. ロール設定
あなたは市場分析に長けた経営コンサルタントです。
2. 指示内容
以下の[業界・テーマ]について、PEST分析(政治、経済、社会、技術)を行ってください。
それぞれの要因が今後1〜3年で市場にどのような影響を与えるか、予測を含めて解説してください。
3. 入力内容の例
[業界・テーマ]: 日本の冷凍食品業界、または電気自動車(EV)市場。
No.2 未来シナリオの予測
- 目的:将来起こりうる変化を複数のパターンで描き、リスクと機会を可視化する。
1. ロール設定
あなたは未来予測を専門とするフューチャリストです。
2. 指示内容
[特定のトレンド]が今後5年間で加速した場合、私たちの生活やビジネスはどう変わるでしょうか?
「楽観的なシナリオ」「悲観的なシナリオ」「現状維持」の3パターンで予測してください。
3. 入力内容の例
[特定のトレンド]: 生成AIの業務利用、またはリモートワークの完全定着。
No.3 バズワードの深層解読
- 目的:流行語の背景にある心理や価値観を読み解く。
1. ロール設定
あなたは消費者心理に詳しいマーケティングリサーチャーです。
2. 指示内容
最近よく耳にする[キーワード]について、なぜ今これが注目されているのか、社会的背景と消費者のインサイト(隠れた欲求)を分析してください。
3. 入力内容の例
[キーワード]: 「タイパ(タイムパフォーマンス)」、または「ウェルビーイング」。
No.4 異業種からのヒント探索
- 目的:他業界の成功モデルをヒントに、新しい発想を取り入れる。
1. ロール設定
あなたはイノベーション創出の専門家です。
2. 指示内容
[自社の業界]において、[他業界の成功モデル]を応用するとしたら、どんな新しいサービスや商品が生まれるでしょうか?
具体的なアイデアを3つ提案してください。
3. 入力内容の例
[自社の業界]: フィットネスジム運営。
[他業界の成功モデル]: サブスクリプション型の動画配信サービス。
No.5 アーリーアダプターの行動分析
- 目的:流行に敏感な層の動きを捉え、次のブームを読み解く。
1. ロール設定
あなたはトレンドハンターです。
2. 指示内容
現在、[ターゲット層]のアーリーアダプターの間で盛り上がり始めている、または支持されている[ジャンル]の新しい動きや価値観を3つ挙げてください。
3. 入力内容の例
[ターゲット層]: 20代のZ世代。
[ジャンル]: ファッション、またはSNSの使い方。
1-2. 競合他社の深掘り分析

市場が見えてきたら、次は競合の理解です。
AIを使うと、公開されている情報だけでも競合の強み・弱み、戦略の狙いまで立体的に把握できます。
No.6 競合の強み・弱み分析(SWOT)
- 目的:競合を客観的に評価し、自社が入り込めるポイントを探す。
1. ロール設定
あなたは企業分析のプロフェッショナルです。
2. 指示内容
以下の[競合企業・サービス]について、Web上の情報を基に簡易的なSWOT分析を行ってください。
特に「弱み」は、顧客視点での不満点も推測してください。
3. 入力内容の例
[競合企業・サービス]: スターバックスコーヒー、または競合A社(URLがあれば尚可)。
No.7 顧客レビューの感情分析
- 目的:口コミの“生の声”から、満足と不満のポイントを抽出する。
1. ロール設定
あなたはデータサイエンティストです。
2. 指示内容
以下の[競合の評判・口コミ]を分析し、ユーザーが「何に満足しているか」「何に不満を感じているか」を抽出してください。
そこから、この市場でまだ満たされていないニーズ(機会)を提示してください。
3. 入力内容の例
[競合の評判・口コミ]: (AmazonレビューやSNSの声を貼り付ける)。
No.8 マーケティング戦略の逆設計
- 目的:競合が行う施策の「狙い」を読み解き、背景にある戦略を推測する。
1. ロール設定
あなたは熟練のマーケティングディレクターです。
2. 指示内容
[競合企業]は最近、[特定のキャンペーンや施策]を行っています。
この施策の狙い(ターゲット、目的、期待される効果)を逆算して推測し、論理的に解説してください。
3. 入力内容の例
[競合企業]: マクドナルド。
[特定のキャンペーンや施策]: 期間限定の高級路線バーガー発売。
No.9 差別化ポイントの抽出
- 目的:自社が“勝てるポジション”を見つけるために、優位性を言語化する。
1. ロール設定
あなたはブランディングの専門家です。
2. 指示内容
[自社サービス]と[競合サービス]の機能を比較し、自社が競合に対して優位性を発揮できる「差別化ポイント」を3つ提案してください。
機能面だけでなく、情緒的な価値も考慮してください。
3. 入力内容の例
[自社サービス]: オンライン英会話(安さが売り)。
[競合サービス]: コーチング英会話(高額だがサポートが手厚い)。
No.10 価格戦略の妥当性評価
- 目的:市場相場と比較しながら、価格設定の適切さと必要な付加価値を導き出す。
1. ロール設定
あなたは価格戦略(プライシング)のコンサルタントです。
2. 指示内容
[業界]において、[提案する価格設定]は妥当でしょうか?
競合他社の一般的な価格帯と比較し、この価格で勝負する場合に付加すべき「価値」や「条件」を助言してください。
3. 入力内容の例
[業界]: 個人のパーソナルトレーニング。
[提案する価格設定]: 月額3万円の通い放題プラン。
1-3. 顧客インサイト・ギャップ発見

市場と競合の状況が見えてきたら、次は「顧客のまだ満たされていない願い」を探ります。
ここは、まさにビジネスの種が眠っている場所です。
No.11 ペルソナの解像度向上
- 目的:顧客の生活を具体的に描き、リアルな課題を浮かび上がらせる。
1. ロール設定
あなたは小説家のような想像力を持つ脚本家です。
2. 指示内容
[ターゲット属性]の典型的な一日のスケジュールを物語風に書いてください。
その中で、彼らが[特定の課題]に直面し、感情が動く(イライラする、困る)瞬間を具体的に描写してください。
3. 入力内容の例
[ターゲット属性]: 30代共働き、子育て中の女性。
[特定の課題]: 毎日の夕食作り。
No.12 「ジョブ」の発見(JTBD)
- 目的:表面的なニーズではなく、購入の根底にある“本当の目的”を突き止める。
1. ロール設定
あなたはジョブ理論(Jobs to be Done)の実践者です。
2. 指示内容
人が[商品・サービス]を購入する際、本当に解決したいと思っている根本的な課題(ジョブ)は何でしょうか?
機能的な側面だけでなく、社会的・感情的な側面からも分析してください。
3. 入力内容の例
[商品・サービス]: 高級なシステム手帳、またはエナジードリンク。
No.13 ブルーオーシャン探索
- 目的:競争相手が少ない“未開拓の領域”を割り出す。
1. ロール設定
あなたは戦略キャンバスを描く経営戦略家です。
2. 指示内容
[業界]において、多くの企業が競争している要素(例:価格、機能の多さ)と、逆に見落とされている要素は何ですか?
見落とされている要素を強化することで生まれる「新しい市場」の可能性を提案してください。
3. 入力内容の例
[業界]: ビジネスホテル業界。
No.14 代替品の脅威分析
- 目的:同業ではなく、全く異なる手段に顧客が流れてしまうリスクを理解する。
1. ロール設定
あなたはリスクマネジメントの専門家です。
2. 指示内容
[自社の商品]を使わずに、顧客が同じ目的を達成できる「代替手段」には何がありますか?
意外なライバル(非競合)を挙げ、なぜ顧客がそちらを選ぶ可能性があるか解説してください。
3. 入力内容の例
[自社の商品]: 映画館での映画鑑賞。
No.15 潜在ニーズの言語化
- 目的:顧客自身も言語化できていない“願望”をキャッチコピーとして表現する。
1. ロール設定
あなたはコピーライターです。
2. 指示内容
[ターゲット]が[現状の不満]を感じているとき、もし魔法のように解決できるとしたら、彼らはどんな言葉で喜びを表現するでしょうか?
その「心の声」をキャッチコピー風に5つ作成してください。
3. 入力内容の例
[ターゲット]: 満員電車で通勤するサラリーマン。
[現状の不満]: 何もできず時間が無駄になること。
1-4. 戦略立案・アウトプット作成

集めた情報を実際の企画書や提案に落とし込みます。
AIを壁打ち相手にすると、構成の穴が見つかり、説得力のあるアウトプットへと磨かれていきます。
No.16 アイデアの壁打ち(6つの帽子)
- 目的:一つのアイデアを多面的に検証し、質を高める。
1. ロール設定
あなたは「6つの帽子」思考法を操るファシリテーターです。
2. 指示内容
私の考えた[アイデア]について、以下の視点から評価してください。
・白(客観的データ)
・赤(感情・直感)
・黒(リスク・懸念)
・黄(利益・メリット)
・緑(創造的改善案)
3. 入力内容の例
[アイデア]: オフィスの空きスペースで野菜を育てる社内サービス。
No.17 企画書の骨子作成
- 目的:ゼロから構成を作る手間を減らし、伝わる流れを整える。
1. ロール設定
あなたは大手広告代理店のプランナーです。
2. 指示内容
以下の[要素]を含んだ、新規事業の企画書の目次構成案を作成してください。
上司を説得するためのロジック(Why→What→How)が通るように構成してください。
3. 入力内容の例
[要素]: 市場背景、ターゲット、サービス概要、収益モデル、スケジュール。
No.18 反論への切り返し想定
- 目的:会議やプレゼンで突っ込まれそうな点を事前に潰しておく。
1. ロール設定
あなたは非常に批判的で論理的な投資家です。
2. 指示内容
私の[提案内容]に対して、承認を渋るための「鋭い質問」や「懸念点」を3つ挙げてください。
また、それに対する効果的な切り返しトークも併せて考えてください。
3. 入力内容の例
[提案内容]: 全社員への有料AIツールの導入。
No.19 エグゼクティブサマリー要約
- 目的:忙しい意思決定者に向けて、企画の要点を30秒で伝える。
1. ロール設定
あなたは要約のプロである編集者です。
2. 指示内容
以下の[企画詳細]を読み込み、30秒で読める「エグゼクティブサマリー(要約)」を作成してください。
結論、メリット、必要なコストが端的に伝わるようにしてください。
3. 入力内容の例
[企画詳細]: (作成した企画書のテキストを貼り付ける)。
No.20 ネクストアクションの具体化
- 目的:企画を“実行可能な計画”に落とし込む。
1. ロール設定
あなたはプロジェクトマネージャーです。
2. 指示内容
この[企画]を実現するために、最初の1週間でやるべき具体的なタスクをリストアップしてください。
タスクは優先順位順に並べ、担当者の役割も想定してください。
3. 入力内容の例
[企画]: 自社ECサイトのリニューアルプロジェクト。
2. 複数プロンプトの複合利用の方法

プロンプトは単体でも効果的ですが、組み合わせることで“点”が“線”になり、やがて“面”としての戦略に育ちます。
情報は 「広げる」→「絞る」→「形にする」 の流れで扱うことが大切です。
2-1. 複合利用の基本原則
前の出力を次の入力として活用する
AIとのやり取りは、積み木のように積み重ねるイメージです。
「市場分析」で出たキーワードを「競合分析」に流し込み、「ターゲット分析」で見えた悩みを「アイデア出し」に反映する──。
こうした連続性が、深い洞察をもたらします。
体系的なフローの構築方法
「調査(No.1–5)」
→「分析(No.6–10)」
→「発見(No.11–15)」
→「立案(No.16–20)」
まず外堀(市場)を埋め、そのあと内堀(競合・顧客)へ進む──
この順番を意識するだけで、企画の説得力は大きく変わります。
2-2. 初心者向けの複合利用の具体例
実際にどう連携させれば「勝てる企画」が生まれるのか。
ここでは、よく使われる組み合わせパターンをご紹介します。
例1: ぼんやりしたトレンドを「自社の商機」に変える
活用プロンプト:No.3(バズワード解読)→ No.13(ブルーオーシャン探索)
- No.3を実行:
気になるキーワード(例:「ソロ活」)を入力し、流行の背景やインサイトをAIに整理させる。 - 出力の一部を選ぶ:
「満たされていない感情」(例:一人で贅沢したいが視線が気になる)をコピー。 - No.13を実行:
業界を指定し、コピーした感情を“見落とされている要素”として入力し、新しい市場機会を探索する。
トレンドの背景にある心理を捉え、それを解決する具体的なサービス案が得られる。
例2: 競合の弱点を突き、最強の差別化戦略を作る
活用プロンプト:No.7(レビュー分析)→ No.9(差別化ポイント)
- No.7を実行:
競合の口コミを貼り付け、不満点を抽出。 - 出力の一部を選ぶ:
抽出された不満点をコピー。 - No.9を実行:
自社サービスの特徴と組み合わせ、“競合が提供できていない価値”を打ち出す差別化ポイントを作る。
市場が求めている価値に沿った説得力ある差別化が可能になる。
例3: ターゲットの日常から「刺さる企画書」を練り上げる
活用プロンプト:No.11(ペルソナ詳細)→ No.17(企画書骨子)
- No.11を実行:
ターゲットの1日を描写し、リアルな“困りごと”を浮き彫りにする。 - 出力の一部を選ぶ:
描写された「課題シーン」や「感情」をコピー。 - No.17を実行:
企画書の「市場背景」や「ターゲットの課題」に反映し、ストーリー性のある骨子を作る。
机上の空論ではなく、“リアルな顧客の姿”に根ざした企画になる。
まとめ
トレンド分析や競合調査は、一部の人だけが持つ“センス”ではなく、誰でも学べる“技術”です。
そしてその多くを、今はAIがサポートしてくれる時代になりました。
大切なのは、AIの答えをそのまま使うことではなく、そこから 「自分ならどう動くか」 を考える視点です。
まずは気になったプロンプトを一つ選び、身近なテーマで試してみてください。
その小さな一歩が、未来を見抜く確かな目を育ててくれるはずです。

