法務リスクを最小化!AIプロンプト20で「抜け目のない」契約書の草案作成

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はじめに

ビジネスの現場において、契約書は自社を守るための「盾」であり、時には攻めに転じるための「矛」にもなります。

ただ、法務の専門知識が十分でない状態で、ゼロから草案を作るのは、正直かなり骨の折れる作業ではないでしょうか。

そこでおすすめしたいのが、AIを「専属の法務アシスタント」として活用する方法です。

この記事を読み進めることで、次の3つの価値を手に入れることができます。

  • 契約書作成にかかる時間を大幅に短縮し、本来注力すべきコア業務に集中できる
  • 専門家の視点を取り入れながら、見落としがちな法務リスクを事前に察知できる
  • 難解になりがちな法的表現を、誰にでも理解しやすい形で整理できる

AIと一緒に、抜け目のない「攻めの法務」を、今日から少しずつ始めてみませんか。


目次

1. 法務文書の作成を加速させるプロンプト20選

ここからは、実務ですぐに使える20個のプロンプトを紹介します。

契約書の土台づくりから、リスクへの備え、そして最終チェックまで。

実際の業務フローに沿って、フェーズごとに厳選しています。


1-1. 契約の土台を作る「基本構成・条項」

まず取り組みたいのは、契約書全体の骨組みを整えることです。

最初に全体像をしっかり描いておくことで、後から「大事な条項を書き忘れていた」と慌てる事態を防げます。


No.1 契約書の全体構成(目次)作成

  • 目的:取引内容に応じて、必要十分な条項を漏れなく洗い出す。
1. ロール設定
あなたは企業の法務部門で長年経験を積んだ、ベテランの法務担当者です。

2. 指示内容
以下の[取引の概要]に基づき、作成すべき契約書の項目(目次)を網羅的に提案してください。
一般的な条項だけでなく、今回の取引特有のリスクをカバーする項目も含めてください。

3. 入力内容の例
[取引の概要]: ITシステムの受託開発。期間は6ヶ月、納品後の保守運用も含む。

No.2 秘密保持(NDA)の基本条項作成

  • 目的:情報漏洩を防ぐため、実効性の高い秘密保持条項を用意する。
1. ロール設定
あなたは知的財産権に詳しい弁護士です。

2. 指示内容
[開示する情報の種類]を守るために、最も厳格な「秘密保持条項」の草案を作成してください。
秘密情報の定義、除外事由、返還義務、有効期間を網羅してください。

3. 入力内容の例
[開示する情報の種類]: 新規事業の企画書、独自の顧客リスト、ソースコード。

No.3 報酬および支払い条件の明確化

  • 目的:後々の金銭トラブルを防ぐため、支払い条件を明確にしておく。
1. ロール設定
あなたは財務管理に精通した法務アドバイザーです。

2. 指示内容
[支払い条件]に基づき、トラブルの余地がない「報酬および支払方法」の条項を作成してください。
振込手数料の負担や、支払遅延時の遅延損害金についても記載してください。

3. 入力内容の例
[支払い条件]: 月額50万円。月末締め翌月末払い。銀行振込にて支払う。

No.4 定義条項の精密化

  • 目的:用語の解釈違いを防ぎ、契約内容の正確性を高める。
1. ロール設定
あなたは論理構成を重視する法務文書作成のプロです。

2. 指示内容
この契約において重要な[キーワード]について、解釈の余地がないほど明確な「定義条項」を作成してください。
複数の意味に取られないよう配慮してください。

3. 入力内容の例
[キーワード]: 「本サービス」「知的財産権」「納品物」。

No.5 契約期間と更新ルールの策定

  • 目的:契約の終わり方や、更新のルールを事前に決めておく。
1. ロール設定
あなたは契約ライフサイクルマネジメントの専門家です。

2. 指示内容
[希望の期間]に合わせて、契約期間と更新、および中途解約に関する条項を作成してください。
「自動更新」の有無と、解約時の通知期限を明確に盛り込んでください。

3. 入力内容の例
[希望の期間]: 1年契約。その後は自動更新。3ヶ月前に通知すれば解約可能。

1-2. 取引を具体化する「個別シナリオ対応」

基本構成が固まったら、次は取引の中身に踏み込んでいきます。

AIを使えば、複雑になりがちな権利関係や業務範囲も、整理しながら言葉に落とし込めます。


No.6 成果物の権利帰属の整理

  • 目的:著作権などの知的財産権が、どちらに帰属するのかを明確にする。
1. ロール設定
あなたは知的財産権を専門とする弁護士です。

2. 指示内容
[成果物]の作成に伴い発生する知的財産権を、[帰属先]に明確に帰属させるための条項を作成してください。
著作者人格権の不行使についても、適切に盛り込んでください。

3. 入力内容の例
[成果物]: デザインデータおよびロゴ。[帰属先]: 委託者(発注側)。

No.7 納品と検収プロセスの定義

  • 目的:どの時点で「業務完了」とするかを明確にし、認識のズレを防ぐ。
1. ロール設定
あなたは品質管理に厳しいプロジェクトマネージャーです。

2. 指示内容
[納品物]に関する、トラブルのない「納品および検収」条項を作成してください。
検収期間、合格基準の通知方法、期間内に返答がない場合の「みなし検収」について含めてください。

3. 入力内容の例
[納品物]: Webサイトの公開。検収期間は納品から10営業日。

No.8 業務の再委託に関する条件設定

  • 目的:知らないうちに業務が孫請けへ流れるリスクをコントロールする。
1. ロール設定
あなたはリスク管理を徹底する法務監査役です。

2. 指示内容
[再委託の可否]の条件に合わせて、再委託に関する条項を作成してください。
再委託先にも本契約と同等の義務を負わせることや、再委託者の責任についても記述してください。

3. 入力内容の例
[再委託の可否]: 原則禁止。ただし書面による事前の承諾がある場合のみ許可。

No.9 競業避止義務の設定

  • 目的:情報流出や人材の引き抜きといったリスクを防ぐ。
1. ロール設定
あなたは人事労務に詳しい法務コンサルタントです。

2. 指示内容
[対象者]に対する「競業避止」の条項を作成してください。
職業選択の自由を侵害しないよう、期間、地域、職種を合理的かつ有効な範囲で限定して記述してください。

3. 入力内容の例
[対象者]: 業務委託契約を締結するコンサルタント。期間は契約終了後1年間。

No.10 損害賠償の制限と範囲

  • 目的:万が一の際に、賠償責任が際限なく膨らむのを防ぐ。
1. ロール設定
あなたは企業の損益を守る、守りに強い法務担当者です。

2. 指示内容
[賠償の上限]を意識した、損害賠償条項を作成してください。
予見できない損害や逸失利益を免責し、賠償額を現実的な範囲に抑えるための表現を用いてください。

3. 入力内容の例
[賠償の上限]: 直近12ヶ月間に支払われた委託料の総額を上限とする。

1-3. リスクを回避する「防衛・トラブル対策」

契約書は、「うまくいっているとき」よりも、揉めたときにこそ真価を発揮します。

想定外のトラブルが起きても慌てずに済むよう、あらかじめ防衛線を張っておきましょう。


No.11 反社会的勢力の排除条項(暴排条項)

  • 目的:コンプライアンスを守り、不適切な相手との関係を未然に断つ。
1. ロール設定
あなたはコンプライアンス重視の企業法務担当です。

2. 指示内容
最新の法規制や実務に即した、強力な「反社会的勢力の排除」に関する条項を作成してください。
表明保証と、違反時の催告なしの即時解除権を含めてください。

3. 入力内容の例
[特記事項]: 全国暴力団排除条例に準拠した最新の標準的表現を希望。

No.12 不可抗力による免責規定

  • 目的:災害やパンデミックなど、自社ではどうにもできない事態に備える。
1. ロール設定
あなたは危機管理に詳しいビジネス法律家です。

2. 指示内容
[想定されるリスク]を含めた、包括的な「不可抗力条項」を作成してください。
不可抗力が発生した際の通知義務と、契約の継続が困難な場合の対応についても触れてください。

3. 入力内容の例
[想定されるリスク]: 地震、台風、感染症の流行、通信インフラの切断。

No.13 契約解除権の発動条件

  • 目的:相手に問題があった場合、スムーズに契約を終えられるようにする。
1. ロール設定
あなたは係争案件に強い訴訟弁護士です。

2. 指示内容
[解除したい状況]を踏まえ、契約を解除できる条件を明確に定めた条項を作成してください。
「催告による解除」と「催告なしの即時解除」を使い分けて記述してください。

3. 入力内容の例
[解除したい状況]: 支払いが2ヶ月遅れた場合や、重大な不祥事を起こした場合。

No.14 合意管轄と準拠法の指定

  • 目的:裁判になった場合の「場所」と「ルール」をあらかじめ決めておく。
1. ロール設定
あなたは国際取引も手掛ける渉外弁護士です。

2. 指示内容
[希望の裁判所]を管轄とする、合意管轄および準拠法の条項を作成してください。
独占的な合意管轄であることを明記し、法的な有効性を確保してください。

3. 入力内容の例
[希望の裁判所]: 東京地方裁判所。日本法を準拠法とする。

No.15 条項の分離可能性

  • 目的:一部の条項が無効でも、契約全体が崩れないようにする。
1. ロール設定
あなたは契約書の有効性を担保する法務チェッカーです。

2. 指示内容
契約の一部が法令により無効と判断された場合でも、他の条項が有効に存続することを定める「分離可能性条項」を作成してください。
標準的かつ汎用的な表現でお願いします。

3. 入力内容の例
[対象]: あらゆる商取引契約に共通して使える標準的なもの。

1-4. 磨き上げと「仕上げのレビュー」

草案ができたら、最後は読みやすさと正確さを磨き上げる工程です。

AIのチェックを入れることで、仕上がりは一段とプロに近づきます。


No.16 難解な法的表現の平易化

  • 目的:法的な意味を保ったまま、誰でも理解できる表現にする。
1. ロール設定
あなたは法律を分かりやすく解説するエデュケーターです。

2. 指示内容
以下の[条項の文章]を、意味を変えずに中学生でも理解できるほど平易な言葉でリライトしてください。
ただし、法的な効力が損なわれないよう注意してください。

3. 入力内容の例
[条項の文章]: 甲は乙に対し、本物件の瑕疵に起因して生じた一切の損害について賠償の責を負うものとする。

No.17 文言の揺れ・矛盾のチェック

  • 目的:用語や論理のズレを見逃さない。
1. ロール設定
あなたは極めて緻密な校閲記者です。

2. 指示内容
以下の[契約書草案]を通読し、用語の表記ゆれ(例:弊社と当社)や、条項間での論理的な矛盾を指摘してください。
見つかった場合は、修正案も提示してください。

3. 入力内容の例
[契約書草案]: (作成した草案をここに貼り付ける)

No.18 自社に不利な条項の抽出

  • 目的:相手案に潜むリスクを事前に洗い出す。
1. ロール設定
あなたは自社の利益を最優先に考える敏腕法務コンサルタントです。

2. 指示内容
提示された[契約書案]を分析し、我が社にとって「著しく不利な条件」や「将来的なリスク」を3つ挙げてください。
それぞれ、どのように修正交渉すべきかの代替案も添えてください。

3. 入力内容の例
[契約書案]: (相手から送られてきたPDFやテキストを貼り付ける)

No.19 要約と重要ポイントの解説

  • 目的:忙しい関係者にも、一瞬で要点を伝える。
1. ロール設定
あなたは要約の達人であるエグゼクティブ・アシスタントです。

2. 指示内容
この[契約書の内容]を、3つの重要なポイントに要約してください。
特に「自社が守るべき義務」と「得られる権利」が明確に伝わるように記述してください。

3. 入力内容の例
[契約書の内容]: (完成した、または検討中の契約書全文)

No.20 英文契約書への翻訳とニュアンス調整

  • 目的:海外取引に耐えうる、正確なリーガル英語に仕上げる。
1. ロール設定
あなたは国際法に精通したリーガル・トランスレーターです。

2. 指示内容
以下の[日本語条項]を、英米法の文脈で一般的に使われる法的な英語(リーガル・イングリッシュ)に翻訳してください。
曖昧さを排除し、格式高い表現を用いてください。

3. 入力内容の例
[日本語条項]: 本契約に関する一切の紛争については、東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。

2. 複数プロンプトの複合利用の方法

プロンプトは単体でも十分に力を発揮しますが、組み合わせることで真価が見えてきます

うまく「つなぐ」ことで、全体に一貫性のある法務文書が完成します。


2-1. 複合利用の基本原則

前の出力を次の入力として活用する

AIとのやり取りは、いわばリレーのようなものです。

たとえば「構成案(No.1)」で得た目次を、そのまま「個別条項作成(No.2〜15)」に渡していきます。

こうすることで、文脈が途切れず、精度の高い草案が出来上がります。


体系的なフローの構築方法

「骨組み(No.1–5)」
→「肉付け(No.6–10)」
→「防御(No.11–15)」
→「推敲(No.16–20)」

この流れを意識してみてください。

最初から完璧を目指す必要はありません。

段階的に整えていくことが、AI法務を使いこなすコツです。


2-2. 初心者向けの複合利用の具体例

ここでは、プロンプトをどう連鎖させるのかを、3つの具体的なシーンで見ていきます。


例1: 複雑な業務委託契約をゼロから完成させる

活用プロンプト: No.1(全体構成)→ No.6(権利帰属)

  • No.1を実行:取引概要を入力し、必要な条項の目次を作成。
  • 出力を選択:目次の中から「知的財産権」に関する項目を抜き出す。
  • No.6を実行:その項目を使って、具体的な条文を作成。

契約全体の整合性を保ちつつ、重要リスクを重点的に補強できます。


例2: 相手から届いた契約書の「地雷」を撤去する

活用プロンプト: No.18(不利な条項の抽出)→ No.10(損害賠償の制限)

  • No.18を実行:相手案の中から、危険な条項を洗い出す。
  • 出力を確認:無制限の賠償義務など、問題箇所を特定。
  • No.10を実行:自社に有利な修正案を作成。

受け身ではなく、根拠ある交渉ができるようになります。


例3: 契約内容を社内に分かりやすく共有する

活用プロンプト: No.17(矛盾チェック)→ No.19(要約と解説)

  • No.17を実行:最終チェックでミスや矛盾を修正。
  • 出力を使用:完成版の契約書をそのまま活用。
  • No.19を実行:現場向けに要点を整理。

法務担当だけでなく、全員がリスクを理解できます。


まとめ

契約書作成は、かつては専門家だけの領域でした。

しかし今は、AIを活用することで、誰でも一定水準以上の草案を作れる時代です。

大切なのは、AIを盲信することではありません。

質の高いたたき台を一緒に作るパートナーとして使うことです。

まずは、身近なNDAや簡単な業務委託契約から試してみてください。

AIという心強い盾を手に入れることで、ビジネスはもっと自由に、そして力強く前に進んでいくはずです。

そして最後は、生成した草案を信頼できる弁護士にチェックしてもらう。

そんなスマートな法務フローを、明日から体験してみてはいかがでしょうか。

今回の内容が、あなたの実務に少しでも役立てば幸いです。

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この記事を書いた人

個人事業主や企業担当者、フリーランスなど、すべての働く人に「AIを使いこなす力」を身につけるためのアドバイスをしています。

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