はじめに
スイングトレードに興味を持ち始めたばかりの段階では、まず「何がわからないのかすら分からない」という壁にぶつかりやすい。
株のニュースやSNSの投稿を見ても、知らない単語ばかりが並び、言葉の意味が分からずに読むのをやめてしまった経験はないだろうか。
こうした状態のままでは、いくらスイングトレードのノウハウを学んでも、土台が崩れているために成果は出ない。
実際、トレードに失敗する初心者の多くは、基礎用語の理解をおろそかにしているケースがほとんどだ。
用語を知らずに戦場に出るのは、地図を持たずに迷路を進むようなものだ。
本記事では、スイングトレードを始める前に最低限おさえておきたい「重要キーワード」を厳選して紹介する。
用語を知れば、チャートの意味も、相場の動きも、SNSで飛び交うプロの意見も、まるで別世界のようにクリアに見えてくる。
知っているだけで避けられる損失があり、知っているだけで拾えるチャンスもある。
スイングトレードの世界に飛び込む前に、まずは言葉を武器として手に入れてほしい。
1. スイングトレードの基本用語
スイングトレードを始めるにあたり、まず押さえておくべきは基本用語である。これらはすべての判断や行動の土台となる。
ニュースや証券会社の画面、SNSで見かける頻出語を正しく理解することは、まさに「地図」を手にするようなものだ。
スイングトレードの特徴を表す言葉
スイングトレードは数日から数週間かけて値幅を狙う中期取引である。
その性質を表す基本語がいくつかある。
- スイングトレード 数日から数週間単位で保有し、値動きの波(スイング)を狙って売買する手法。 短期と長期の中間に位置する投資スタイル。
- ポジション 株を「買って持っている」または「売って持っている」状態のこと。 保有することを「ポジションを持つ」と言う。
- エントリー/エグジット 売買の開始(エントリー)と終了(エグジット)。 買う・売るという操作に名前がついており、戦略的判断に使われる。
- ホールド 買った株をしばらくの間持ち続けること。 「保有」とも呼ばれる。
- 損切り(ロスカット) 想定と逆に動いたときに、損失を確定して売却すること。 感情を排して行う冷静な行動で、トレードの命綱となる。
株価を見るための言葉
トレードでは、株価の動きと方向を読むことが重要である。
そのために使われる表現が以下だ。
- 上昇トレンド/下降トレンド
株価が継続的に上がっている状態が「上昇トレンド」、下がっている状態が「下降トレンド」。
波を読む軸となる。 - レンジ相場
一定の価格帯を上下に行き来する動き。
方向感がない状態。
スイングでは、このレンジブレイクに注目することが多い。 - 押し目買い/戻り売り
上昇中に一時的に下がったところを狙って買うのが「押し目買い」。
下降中に一時的に上がったところで売るのが「戻り売り」。 - 出来高(できだか)
一定期間に取引された株数。
市場の関心度や活発さを示す指標であり、トレンドの裏付けとして重視される。
売買判断に使う用語
スイングトレードでは、日々の判断を支える分析に基づいた用語が多く使われる。
- エントリーポイント/利確ポイント/損切りライン
どこで買い、どこで売り、どこで損切りするかの「価格の目安」。
事前に決めておくことで、感情的なミスを防ぐ。 - リスクリワード比
1回のトレードにおけるリスク(損失)とリターン(利益)の比率。
これが悪いと勝率が高くても負ける。 - 建玉(たてぎょく)
保有中の株数や数量のこと。
信用取引でよく使われるが、ポジションと同義に近い場合もある。 - チャート
株価の変動をグラフ化したもの。
ローソク足を中心に、トレンドや節目を視覚的に捉える。
2. テクニカル分析に関する用語
スイングトレードにおいて最も重要な技術のひとつが「テクニカル分析」である。
これは企業の業績や経済のニュースではなく、株価そのものの動きやパターンを読み取って売買の判断をする方法だ。
実際、チャートだけを見て売買を決めているトレーダーも多く、言葉の理解なくしては正しい判断はできない。
ここでは、スイングトレードで日常的に使われるテクニカル分析の用語を解説する。
チャートの基本構造
チャートとは、株価の動きを視覚的に表したグラフである。
その中で代表的な表示方法が「ローソク足」だ。
- ローソク足
1日の「始値・高値・安値・終値」を1本の足で表現する方法。
赤は陽線(上昇)、青または黒は陰線(下落)など、色で方向性が示される。
スイングトレードでは、1日足や4時間足がよく使われる。 - 時間軸(タイムフレーム)
チャートの表示期間。
日足、週足、5分足などがあり、どの時間軸で戦うかはスタイルによって異なる。
スイングでは主に日足や4時間足が使われる。 - 出来高チャート
株価の下に棒グラフで表示される取引量。
価格の動きと出来高の連動は、トレンドの強さを判断する手がかりになる。
トレンドと転換のサイン
株価の方向を知るためには、トレンド系の指標が有効だ。
流れに逆らわずに乗ることが、勝率を高める鍵になる。
- 移動平均線(MA)
過去の一定期間の終値を平均し、線で表示したもの。
5日線、25日線、75日線などが代表的。
上向きか下向きか、線の交差などからトレンドを読み取る。 - ゴールデンクロス/デッドクロス
短期の移動平均線が長期線を上に抜けるのがゴールデンクロス(買いサイン)。
逆がデッドクロス(売りサイン)。
王道のテクニカル判断。 - トレンドライン
高値同士または安値同士を結んだ直線。
上昇・下降の勢いを視覚的に捉え、ラインを割るか超えるかが大きな判断材料になる。 - サポートライン/レジスタンスライン
株価が下がりにくい水準(支持線)と、上がりにくい水準(抵抗線)。
何度も跳ね返されている価格帯に引くことで、売買のタイミングを探る。
オシレーター系指標とタイミング判断
相場の「過熱感」や「反転の兆し」を知るために使うのがオシレーター系の指標である。
- RSI(相対力指数)
過去一定期間の値動きから買われすぎ・売られすぎを判断する指標。
70以上は買われすぎ、30以下は売られすぎとされる。 - MACD
2本の移動平均線の差から導き出される指標。
線がクロスするタイミングがエントリーやエグジットのシグナルになる。 - ストキャスティクス
現在の株価が過去の一定期間でどの水準にあるかを示す。
高値圏でのデッドクロスや安値圏でのゴールデンクロスに注目される。 - ボリンジャーバンド
移動平均線の上下に標準偏差を加えたバンドを描く。
価格がバンドの端に触れたときは、反発やブレイクが起こる可能性がある。
これらの指標はそれぞれ癖があり、万能ではない。
しかし、複数を組み合わせて「相場のヒント」を探ることができれば、感情に頼らない冷静な判断が可能になる。
3. 注文・取引に関する用語
スイングトレードでは、「いつ・どのように注文を出すか」が結果を左右する。
実際に取引を行う際、注文の種類やその仕組みを理解していないと、思い通りに売買できず、大きな損失につながることもある。
ここでは、証券口座を開いた後に直面する注文方法や取引に関する用語をまとめる。
注文方法の基本
まず、最も基本的な「どの価格で売買するか」を決める注文方法には、次の2種類がある。
- 成行注文(なりゆきちゅうもん)
値段を指定せずに、その時点で最も有利な価格で即時に売買を成立させる注文。
スピード優先のトレードに向くが、思わぬ価格で約定するリスクもある。 - 指値注文(さしねちゅうもん)
「この価格で売りたい」「この価格で買いたい」と価格を指定して出す注文。
希望価格にならない限り成立しないが、思惑どおりの価格で取引できる。
条件付き注文の活用
トレードの自動化やリスク管理のために使われるのが、条件付き注文だ。
以下のような注文方法は、初心者にこそ活用してほしい。
- 逆指値注文(ぎゃくさしね)
一定の価格に達したときに、自動的に成行や指値で注文を出す仕組み。
例:「株価が1,000円を下回ったら自動的に売る」と設定すれば、急落時に損切りを自動で実行できる。 - OCO注文
「もし上がれば利確、下がれば損切り」と、2つの注文を同時に出し、片方が成立すればもう片方はキャンセルされる。
一度に複数のシナリオを設定でき、感情に左右されない取引が可能になる。 - IFD注文
条件が成立したら次の注文を出す、いわば「予約注文」。
たとえば、「株価が1,000円になったら買い、1,050円になったら売る」といった自動戦略が可能。 - IFDOCO注文
IFDとOCOを組み合わせた高度な自動注文。
最初に買い注文を出し、それが通ったら利益確定と損切りの注文を同時に出す。
その他の重要な取引関連用語
売買に関する基礎的な知識として、次の用語も押さえておきたい。
- 約定(やくじょう)
注文が市場で成立し、実際に売買が完了したことを指す。
注文を出しただけでは取引は成立しておらず、約定をもって完了となる。 - スプレッド
買値(ビッド)と売値(アスク)の差。
株の場合は小さいが、FXなどではこの差が実質的なコストになる。
流動性の低い銘柄では広がる傾向がある。 - 取引手数料・スプレッドコスト
証券会社に支払う売買の手数料。
最近では手数料無料の証券口座も増えているが、条件付きであったり約定代金に応じて変動する場合もある。 - 建玉整理・ポジション整理
すべてのポジションを一旦解消して、ノーポジションにすること。
相場が不透明なときやリスクを回避したいときに行う。
注文の出し方を理解しないままトレードを始めると、意図しないタイミングで約定し、大きなストレスや損失を生む。
らかじめ注文方法を知っておくことで、感情に流されず機械的な判断が可能になる。
これがスイングトレードにおける「戦術の引き出し」のひとつである。
4. 相場環境や外部要因に関する用語
スイングトレードは、チャートや注文テクニックだけでは成り立たない。
相場を取り巻く「環境」や「背景」を理解することもまた、勝ち続けるためには欠かせない。
特に、短期〜中期のトレードでは、突発的な外部要因が値動きを大きく変えることがある。
ここでは、市場の動向や世界のニュースを読み解くために重要な用語を解説する。
経済指標と政策関連の用語
経済の健康状態を示すデータや、中央銀行の動きは、株価に大きな影響を与える。
- 日銀(日本銀行)・FRB(米国連邦準備制度理事会)
各国の中央銀行。
特にFRBの政策金利の発表は、世界中の市場を揺るがす。
日本株であっても米国の動向には要注意。 - 利上げ・利下げ
金利を引き上げたり引き下げたりする政策。
利上げは景気過熱を冷ます動きで、株価にマイナス材料。
利下げは資金が株に流れやすくなり、プラス材料。 - 雇用統計(米・日本)
毎月発表される重要経済指標。
失業率や新規雇用者数が注目され、市場のボラティリティが大きくなる傾向がある。 - GDP(国内総生産)
国の経済成長を示す指標。
予想より強い結果であれば株高につながる可能性が高い。 - CPI(消費者物価指数)
物価の上昇・下落を示す指標。
インフレ傾向かどうかを見極め、金利や政策の判断材料になる。
相場心理や投資家動向に関する用語
市場の動きは人間の心理によっても動かされる。
「誰がどう動いているのか」を知ることで、売買判断の精度が上がる。
- リスクオン/リスクオフ
投資家がリスク資産(株や仮想通貨など)を積極的に買う状態を「リスクオン」。
安全資産(円・債券など)に逃げる動きを「リスクオフ」と呼ぶ。 - 需給(じゅきゅう)
売り手と買い手のバランス。
どれだけ材料が良くても、売り圧力が強ければ株価は上がらない。
「買いたい人が多い=上がる」とは限らない。 - 空売り(ショート)
保有していない株を先に売って、下がったところで買い戻すことで利益を得る取引。
相場の下落局面でも利益を出せるが、上昇した場合のリスクが大きい。 - 踏み上げ
空売りしていた投資家が損失拡大を恐れて買い戻すことによって、株価が急騰する現象。
出来高の増加やニュースで注目されることが多い。
株価全体に影響する外部イベント
予測できない突発的なニュースや、定期的に予定されているイベントも、スイングトレードでは重要だ。
- 決算発表
上場企業が年4回行う業績報告。
特に決算直後は株価が大きく動くため、保有中の銘柄がいつ決算かを把握しておく必要がある。 - 地政学リスク
戦争、テロ、外交問題など。
政治的な不安があると、投資家はリスクを避ける動きに出るため、相場が一気に下がることがある。 - 為替(ドル円など)
日本株であっても、為替の動きは大きく影響する。
特に輸出企業は「円安=業績改善」とされ、為替ニュースが材料になる。 - 金融政策イベント(FOMC・日銀会合)
政策金利や景気見通しが発表されるタイミング。
事前にスケジュールを確認し、ポジションの整理や様子見の判断が必要。
これらの要因は、テクニカル分析だけでは読み切れない。
5. SNS・情報収集でよく見かける言葉と略語
今やトレーダーの多くが、SNSや掲示板、投資系メディアを日々チェックしている。
特にスイングトレードでは、個別銘柄の「材料」や「話題性」が株価に与える影響が大きいため、情報収集は必須のスキルである。
だが、SNSやネット掲示板では専門用語に加えてスラングや略語、独自の表現が多く、初心者には非常にわかりづらい。
意味がわからなければ誤った判断を招く恐れもある。
ここでは、SNSや投資サイトで頻出する用語とその背景を整理する。
SNSで使われる用語と表現
- イナゴ
人気銘柄に群がる短期トレーダーのこと。
買いの勢いだけを頼りに飛びつく様子が、群れを成すイナゴに例えられる。
勢いが止まると急落する危険な銘柄になりやすい。 - ガラ(ガラる)
「ガラガラと崩れる」ことから来た表現で、株価が突然暴落する様子を指す。
急落の前兆として「これはガラきそう」などと使われる。 - 寄り天/寄り底
寄付き(市場開始直後)がその日の高値になるのが寄り天、安値になるのが寄り底。
その日の流れを左右する重要な動きである。 - 養分
利益を出している人の裏で損失を出すトレーダーのこと。
皮肉な言葉だが、自覚がないまま養分になってしまう初心者も多い。 - 煽り(あおり)・仕手(して)
SNS上で株価を吊り上げるために意図的に煽る投稿をする人もいる。
組織的に動かす「仕手筋」は個人では太刀打ちできない存在である。
略語・ネットスラング辞典
SNSでは文字数制限があるため、多くの略語が飛び交う。
意味を理解していないと、読み間違いや誤解が生じやすい。
略語 | 正式名称・意味 |
---|---|
GU | ギャップアップ(始値が前日終値より高く始まる) |
GD | ギャップダウン(始値が前日終値より低く始まる) |
S高 | ストップ高(1日で許容される最大の上昇) |
S安 | ストップ安(1日で許容される最大の下落) |
LC | ロスカット(損切り) |
PF | ポートフォリオ(保有銘柄の構成) |
買い増し | 保有している銘柄をさらに追加購入すること |
逃げ場 | 株価が下がる前に売るチャンスのこと |
これらの表現は、株式用語というより「投資家のリアルな感情」が詰まった言葉である。
そのため、書籍や証券会社の説明には出てこないが、現場感覚では必須の知識だ。
情報収集の落とし穴と使い方のコツ
SNSや掲示板を使ううえで、注意すべき落とし穴もある。
- 情報の真偽は常に疑う
確証もない情報が拡散され、あたかも真実のように受け止められることがある。
必ず複数ソースをチェックし、公式発表を確認する癖をつけたい。 - ポジショントークに注意
SNSでの強気な発言の裏には、その人がその銘柄を持っている(=買ってほしい)という意図があることが多い。
冷静な視点を保つ必要がある。 - 情報を盲信しない
銘柄の選定やエントリーは、最終的に自分の判断で行うべきである。
他人の分析をうのみにして失敗しても、誰も責任は取ってくれない。
SNSは、うまく使えば「速報性の高いヒントの宝庫」である一方で、「ノイズの多い情報の海」でもある。
取捨選択のセンスを磨くことこそ、初心者と勝ち組の最大の違いになる。
まとめ
この記事では、スイングトレードの実践において初心者がつまずきやすい用語や表現を解説した。
単なる単語の丸暗記ではなく、相場の背景や実際の使われ方まで含めて理解することが目的である。
株式投資の世界は、言葉を知らなければ情報収集も判断も行動もできない。
逆に言えば、用語を理解するだけでも一歩抜け出せる。
「用語を覚えるのは面倒だ」と思っていたかもしれない。
だが、それは「株で勝つための地図を読む力」そのものである。
本記事を何度も読み返し、実際のチャートやニュースと照らし合わせながら活用してほしい。
用語を知り、意味を理解し、使いこなす。
そこからスイングトレードの本当のスタートが始まる。