はじめに
株式投資に興味はあるが、何を買えばいいのか分からず、最初の一歩を踏み出せずにいる人は多い。
銘柄の選び方を間違えれば、短期間で資金を大きく減らすリスクもある。
特に、スイングトレードではタイミングだけでなく、どの銘柄に手を出すかが収益を左右する致命的なポイントだ。
なぜなら、すでに値上がりしてしまった株や、一見お得そうに見えるが中身の伴っていない株を選ぶと、高値づかみになりやすい。
さらには、急騰を繰り返す「テーマ株」や仕手株に飛びつくと、一気に含み損を抱える可能性すらある。
この記事では、スイングトレード初心者がどのように銘柄を選ぶべきか、そして手を出してはいけない株の特徴や注意点を体系的に解説する。
過去に失敗した経験があっても、正しい選び方を知ればリスクを抑えながら収益チャンスを狙えるようになる。
最短距離で成果を出すためのヒントを、これから順を追って紹介していく。
1. 儲かる銘柄の選び方とは?
スイングトレードにおいて「どの銘柄を選ぶか」は、利益を出す上で最も重要なポイントだ。
どんなに売買タイミングが上手くても、動かない株や方向感のない株を選んでしまえば、資金は眠ったままになる。
儲かる銘柄には共通する特徴がある。
それを知ることが、損しない第一歩だ。
値動きがあるかが最優先
スイングトレードは数日から数週間の間で利益を狙う取引スタイルである。
したがって、値動きが少ない株=稼げない株と考えてよい。
売買するからには、ある程度のボラティリティ(価格の変動幅)が必要だ。
以下のような銘柄が理想的だ。
- 1日の値動きが3%以上あることが多い
- 出来高が安定していて、売買が活発
- 過去1か月のチャートに上昇トレンドが見られる
こうした株は、短期で利益を出しやすい。
反対に、値動きが乏しく、出来高が極端に少ない株は、いくら上がりそうに見えてもスイングには向かない。
チャートに素直な動きをしているか
テクニカル分析が効きやすい銘柄は、スイングトレードで利益を出しやすい。
つまり、チャートパターン通りに動く株=初心者でも読みやすい株ということだ。
以下のようなチャートを狙うとよい。
- 移動平均線に沿って素直に上昇している
- 押し目をつけながら徐々に高値を更新している
- ブレイクアウトの初動にある
反対に、チャートがジグザグで方向感が読みにくい銘柄、急騰急落を繰り返すような不安定な銘柄は、値動きが読みにくく、リスクも大きくなる。
材料があるかどうかを確認する
短期的に株価が動くには、何らかの「きっかけ」が必要だ。
それが「材料」である。
材料とは、企業に関するニュースや業績、発表、イベントなど、株価を動かす理由になる情報のことだ。
以下のような材料があると注目度が高まりやすい。
- 直近で好決算を出している
- 自社株買いや株式分割などの株主還元策を発表している
- 新しい製品やサービスを展開したばかり
- 業界的な追い風(例えばAI、再生エネルギー、半導体など)
材料があることで、株価が動きやすくなり、スイングトレードのチャンスも生まれる。
ただし、すでに材料が出尽くした株には注意が必要だ(これは次章で詳しく扱う)。
値がさ株よりミドルレンジ株が狙い目
値がさ株とは、株価が1万円を超えるような高額な銘柄のことだ。
これらは1単元(100株)買うだけで100万円以上の資金が必要になる。
初心者にとっては資金効率が悪く、ボラティリティも大きすぎる。
おすすめは以下のようなミドルレンジ株である。
- 株価が1,000円〜3,000円程度
- 出来高もあり、流動性が高い
- チャートが素直で動きが読みやすい
このゾーンの銘柄は、値動きも程よく、初心者でも参入しやすい価格帯である。
2. 手を出すべきでない株の特徴
スイングトレードで失敗する多くの原因は、値動きの読めない銘柄やリスクの高い銘柄に手を出してしまうことにある。
初心者が利益を上げるためには、「避けるべき株」をあらかじめ理解しておく必要がある。
以下では、特に注意すべき株の特徴を具体的に見ていく。
出来高が極端に少ない株
出来高とは、ある株が1日にどれだけ売買されたかを示す数値だ。
これが少ない株は、「買いたいときに買えない」「売りたいときに売れない」状態に陥りやすい。
注意すべきポイント:
- 出来高が数千株〜1万株以下の銘柄
- 板(売り買い注文の一覧)がスカスカ
- スプレッド(買値と売値の差)が大きい
こういった株は、一度買ってしまうと逃げ場がなくなる可能性が高い。
思惑が外れたとき、すぐに損切りできずにズルズルと損失が膨らむリスクがある。
突発的に急騰した株
前日比で急騰している株を見ると、「まだ上がるかもしれない」「チャンスかもしれない」と感じるかもしれない。
しかし、多くの場合はすでに「上がった後」であることが多く、乗り遅れた状態だ。
急騰株が危険な理由:
- 高値づかみになりやすい
- 利益確定の売りが殺到して急落しやすい
- 上昇理由が曖昧な場合、落ちるのも早い
例えば、前日比+20%を記録した翌日にさらに上昇するケースは稀である。
むしろ、その日が天井になる可能性が高い。
上場廃止・経営危機に関するニュースがある株
「大きく下がっている=割安」とは限らない。
実態が悪化しているからこそ売られている株も多く存在する。
以下のような材料には要注意だ。
- 債務超過や赤字決算を連続している
- 上場廃止リスク(東証から警告が出ているなど)
- 粉飾決算や不祥事などの報道
これらの株は、短期的にリバウンドを狙う「逆張り」で買う投資家もいるが、初心者には極めてリスクが高く、予想外の暴落を招く可能性がある。
値動きが荒すぎる仕手株
仕手株とは、一部の投資家やグループが意図的に価格を動かしている疑いがある銘柄だ。
短期間で数倍に急騰することもあるが、同じスピードで暴落する。
初心者がこの波に乗るのは極めて難しい。
仕手株の特徴:
- 明確な材料がないのに異常に値上がりしている
- 数日で株価が倍以上に上昇
- 出来高が一気に跳ね上がっている
こういった銘柄はプロの短期筋が集まる戦場であり、一般の個人投資家が飛び込むべきではない。
信用買い残が極端に多い株
信用買い残とは、「信用取引で買われたまま売られていない株」の量であり、多すぎると将来の売り圧力となる。
リスクのあるサイン:
- 信用買い残が多すぎて、反対売買が発生しやすい
- 株価の上値が重くなり、上昇してもすぐに下がる
- 個人投資家のポジションが偏っている証拠
信用残は証券会社の情報ページなどで無料で確認できるため、事前にチェックしておくべき指標の一つである。
3. 業績だけでは判断できない理由
株式投資と聞いて「とにかく業績のいい会社を選べばいい」と考える人は多い。
もちろん、業績は重要な判断材料の一つではある。
しかし、スイングトレードにおいては、業績だけで株価の動きを判断するのは危険である。
ここでは、その理由をいくつかの観点から解説する。
業績と株価は必ずしも連動しない
株価は企業の価値を表すと同時に、市場の期待や思惑を織り込んで先に動く性質がある。
つまり、すでに「好業績」が株価に織り込まれていれば、発表後に株価が下がることすらある。
たとえば次のようなケースだ。
- 好決算を出したが株価は下落
- 業績が安定しているのに株価が横ばい
- 赤字企業なのに株価が急騰
これらは一見矛盾しているように見えるが、市場が予想していた内容とのギャップに株価が反応しているにすぎない。
業績は「過去」、株価は「未来」
決算書に出てくる数字は、あくまで過去の業績である。
スイングトレードでは「これから数日〜数週間の間にどう動くか」が重要なため、過去の数字ばかり見ていては遅れる。
見るべきなのは以下のような情報だ。
- 会社が出した今後の業績予想(ガイダンス)
- 今後の新商品・新サービスの発表予定
- 経済ニュースや金融政策の影響
- 株主還元策(自社株買い・配当)の有無
つまり、株価は「期待」「材料」「タイミング」に強く影響される。
業績が良くても、材料がなければ動かないことも多い。
地味な好業績企業は見向きもされないことがある
たとえ営業利益が右肩上がりで、財務内容も良く、倒産リスクが極めて低いとしても、市場から関心を持たれていなければ株価は動かない。
特に、市場から注目されていない業種や銘柄は、材料がない限り短期的な値動きに乏しい。
例えば以下のような企業は要注意だ。
- 地方のインフラ系企業(安定しているが値動きなし)
- 非IT・非製造業の成熟産業
- 配当はあるが成長性の乏しい企業
こういった銘柄は長期保有には向いているかもしれないが、スイングトレードでは資金の「寝かせ」となり、機会損失につながる。
株価は思惑で動き、真実で下がる
投資の世界では「噂で買って、事実で売る(Buy the rumor, sell the fact)」という格言がある。
これは、株価が好材料の期待で上がり、実際に発表されると下がるという現象を表している。
具体例:
- 新製品の噂で株価上昇 → 発売決定のニュースで反落
- 自社株買いの期待で上昇 → 発表された瞬間に材料出尽くしで下落
これは初心者にとって非常に落とし穴になりやすい。
業績発表を鵜呑みにして購入した瞬間に下落に巻き込まれることもある。
4. テーマ株に飛びつくな!
ニュースやSNSで「AI関連株が急騰!」「次世代半導体銘柄が話題に!」といった情報を目にすると、多くの人が「今こそ買うべきでは?」と感じる。
しかし、その時点で多くのテーマ株はすでに高値圏に達しており、そこに飛びつくのは「カモにされる入り口」となる。
ここでは、テーマ株の落とし穴と向き合い、初心者が冷静に判断するための視点を解説する。
テーマ株とは何か?
テーマ株とは、特定の社会的・経済的なトレンドやニュースに連動して注目を集める銘柄群のことだ。
AI、自動運転、再生エネルギー、量子コンピュータ、宇宙開発、円安恩恵など、時代ごとにさまざまなテーマが浮上する。
テーマ株は、以下のような動き方をする。
- テーマが報道される → 一部銘柄が急騰
- SNSやメディアで話題に → 個人投資家が殺到
- 一斉に買われる → 短期で高騰
- 材料が出尽くす → 一斉に下落
この流れは、まるで熱狂と冷却の波のように繰り返される。
初心者は、この波に翻弄されて損失を出しやすい。
初心者がテーマ株で負ける典型パターン
以下のような行動パターンが、初心者がテーマ株で損する流れである。
- SNSやニュースで「今注目の〇〇関連株!」という言葉を目にする
- チャートを見るとすでに株価が2倍、3倍になっている
- 「まだ上がるかもしれない」と思ってエントリー
- 翌日、急落して含み損を抱える
- 損切りができず、塩漬けになる
これは決して珍しい話ではなく、多くの初心者が陥っている「高値づかみ地獄」である。
プロは「テーマに乗る」のではなく、「テーマを仕込む」
上昇初期のテーマ株に仕込んでいた投資家は、テーマが報道された瞬間に一斉に利確を始める。
つまり、プロが売っているところに、初心者が買いに行く構図になりやすい。
これを避けるためには以下の行動が必要だ。
- テーマが話題になる前の銘柄を地道に調べる
- SNSの「急騰ワード」に安易に飛びつかない
- 上昇した理由と、材料の出所を冷静に分析する
特に「話題になった時点ですでに遅い」と覚えておくことが大切だ。
本当に強いテーマ株とは「出遅れ銘柄」
テーマ株の中には、「本命株」と呼ばれる銘柄が先行して上昇することが多い。
しかしその後に、まだ上昇していない「出遅れ銘柄」が注目されるタイミングがくる。
これがスイングトレーダーにとってのチャンスとなる。
出遅れ銘柄の見極め方:
- 同じ業種で材料性があるのにまだ上昇していない銘柄
- チャートがレンジを抜けそうなタイミングにある
- 出来高が少しずつ増えている
つまり、テーマ株に乗るなら「先回り」か「出遅れ」を狙う戦略的な視点が必要であり、感情的に飛びついてはならない。
5. 初心者はまず安定株から入れ
「急騰株で一発当てたい」「テンバガー(10倍株)を狙いたい」
こうした思いは誰もが一度は抱く。
しかし、投資初心者にとってその願望は、最悪のスタートラインになる可能性が高い。
スイングトレードの第一歩は、リスクの少ない安定株から入ることが最も重要である。
ここでは、なぜ安定株が初心者向けなのか、そしてどのように選ぶべきかを具体的に解説する。
安定株とは何か?
安定株とは、値動きが比較的穏やかで、業績や財務が堅実な企業の株を指す。
一般的に以下のような特徴を持つ。
- 業績が長年にわたり黒字安定している
- 株価の急落や急騰が少ない
- 出来高が安定していて、売買しやすい
- 配当や株主優待がある
たとえば、生活必需品メーカー、大手通信会社、電力・ガス、食品、インフラ関連企業などがこれに該当する。
これらの銘柄は短期的な爆発力には欠けるが、相場が荒れても比較的落ち着いた値動きを見せるため、初心者の練習台として最適である。
安定株でスイングトレードを行う理由
スイングトレードは、数日〜数週間の保有を前提としたスタイルである。
そのため、価格が安定しすぎていると利益が出づらいのではないかと思うかもしれない。
しかし、安定株にも以下のような「ほどよい値動き」が存在する。
- 月単位で5~10%の値幅を繰り返している
- 材料が出たときに限って一時的に動く
- テクニカル指標との相性が良く、動きが読みやすい
このような銘柄であれば、ルールに基づいた練習がしやすく、失敗しても致命傷になりにくい。
また、値動きが穏やかであるほど、感情のブレが少なくなり、冷静に取引を振り返ることができる。
安定株の具体的な選び方
初心者がスイングトレードのために安定株を選ぶ際には、次のような基準を活用すると良い。
- 日経平均採用銘柄の中から選ぶ
- 出来高が常に多く、流動性が高い
- チャートに明確な「サポートライン」「レジスタンスライン」がある
- 自分がよく知っている業種や商品を扱う企業
たとえば、大手小売チェーンや食品メーカー、医薬品会社などは、値動きが読みやすく、ニュースに振り回されにくい傾向にある。
さらに、過去半年~1年分のチャートを見て「上下のパターン」を確認する癖をつけておくことで、より精度の高いスイングトレードが可能になる。
安定株で「負けない経験」を積むことが重要
多くの初心者が最初に負けてしまい、「株は怖い」と感じて退場する。
そうならないためには、まずは負けないトレードから始めることが何より大事だ。
- 大きく勝つことよりも、大きく負けないこと
- 予測不能な値動きよりも、予測しやすい動きに集中
- 損切りや利確のルールを、安定株で徹底的に練習
この経験が蓄積されて初めて、「テーマ株」「急騰株」といったより難易度の高い銘柄への挑戦が現実的になってくる。
まとめ
スイングトレードにおける銘柄選びは、利益の土台を築く最も重要なステップである。
焦って選べば失敗し、仕組みを理解して選べば安定した勝ち筋が見えてくる。
何より重要なのは、感情で動かないこと。
儲かりそうだから、誰かが言っていたから、という理由で飛びつくと、損失は一瞬で膨らむ。
勝つための第一歩は、「何を買うか」を冷静に判断する目を養うことだ。
そして、それは知識と経験を積み上げることでしか得られない。
スイングトレードの世界は、早い動きの中にこそチャンスがある。
しかし、慌てず、焦らず、選ぶ銘柄にこそ時間をかけて取り組むべきである。
まずはこの基礎を武器に、一歩を踏み出していこう。