はじめに
「自信を持って送り出したプレスリリースなのに、まったく反応がない」
広報を担当している方なら、一度はこんな悔しさを味わったことがあるのではないでしょうか。
記者のもとには、毎日何百通ものプレスリリースが届きます。
その中から「これは取材したい」と思ってもらうには、ニュースとしての価値がひと目で伝わること、そしてプロの目線に合った構成であることが欠かせません。
ただ、これをすべて一人で考え抜くのは、正直かなりの重労働です。
そこで力を発揮するのがAIです。
AIを単なるツールではなく、「優秀な編集アシスタント」として迎え入れてみてください。
それだけで、プレスリリースの完成度は驚くほど変わってきます。
- 客観的に見た「ニュース価値」の判断
- メディア視点で考えた「刺さる構成案」
- 記者がそのまま使いやすい「素材」の整理
この記事では、こうしたポイントを一気にカバーできる20のプロンプトをご紹介します。
AIと一緒に、メディアが思わず反応してしまう「攻めの広報」を始めてみませんか。
1. 企画書作成を加速させるプロンプト20選
ここからは、コピー&ペーストですぐに使える20個のプロンプトを紹介していきます。
企画の切り口探しから、原稿作成、仕上げの推敲、そして配信戦略まで。
広報業務の流れに沿って、フェーズごとに使いやすいものを厳選しました。
1-1. ネタ出し・切り口の発見

最初のステップは、自社の情報を「社会に届けるべきニュース」に変換することです。
AIを壁打ち相手として使ってみると、自分だけでは気づけなかった魅力や切り口が、次々と浮かび上がってきます。
No.1 ニュースバリューの「壁打ち」診断
- 目的:情報の中にある「報道価値」を客観的に洗い出し、企画の軸をはっきりさせる。
1. ロール設定
あなたは大手新聞社の社会部記者であり、敏腕デスクです。
2. 指示内容
私が作成しようとしているプレスリリースの[概要]を分析し、メディアが取り上げたくなる「ニュースバリュー(新規性・社会性・人間味)」を3つ抽出してください。
また、現状で不足している要素があれば指摘してください。
3. 入力内容の例
[概要]: 創業50年の老舗文具メーカーが、完全リモートワーク向けの「デジタル断ちノート」を開発した。若手社員のアイデアから製品化された。
No.2 ターゲットメディアのペルソナ定義
- 目的:どのメディアの、どんな担当者を狙うのかを明確にし、刺さる文脈を作る。
1. ロール設定
あなたは広報戦略に精通したPRコンサルタントです。
2. 指示内容
今回の[新サービス]を取り上げる可能性が高い「メディア媒体(TV、Web、雑誌)」と、その担当者が好む「キーワード」や「文脈」を具体的に3つ挙げてください。
3. 入力内容の例
[新サービス]: 廃棄野菜を活用した、愛犬専用の無添加フリーズドライおやつ。SDGsへの貢献を謳っている。
No.3 「社会潮流」とのマッチング
- 目的:世の中のトレンドと自社ネタを掛け合わせ、記事にしやすい理由をつくる。
1. ロール設定
あなたはトレンド分析が得意なWebメディア編集長です。
2. 指示内容
現在話題になっている社会トレンドや季節のイベント([時期・トレンド])と、私の[商品]を関連付けた「特集企画案」を3つ提案してください。
記者がそのまま企画会議に出せるレベルで書いてください。
3. 入力内容の例
[時期・トレンド]: 4月の新生活シーズン、物価高による節約志向。
[商品]: 月額500円で利用できる、家具のサブスクリプションサービス。
No.4 競合との差別化ポイント抽出
- 目的:情報に埋もれないため、他社にはない「尖った強み」を言葉にする。
1. ロール設定
あなたは辛口のマーケティング評論家です。
2. 指示内容
以下の[商品特徴]と[競合情報]を比較し、メディアに強調すべき「圧倒的な差別化ポイント(USP)」を一行で表現してください。
また、それを裏付けるためのデータの見せ方も助言してください。
3. 入力内容の例
[商品特徴]: AIが自動で議事録を作成するツール。精度98%。
[競合情報]: すでにGoogleやZoomにも類似機能がある。
No.5 開発ストーリーの深掘り
- 目的:機能説明だけで終わらせず、共感を生む「物語」を掘り起こす。
1. ロール設定
あなたは「プロジェクトX」のようなドキュメンタリー番組の構成作家です。
2. 指示内容
この[プロジェクト背景]をもとに、読者の心を動かす「開発ストーリー」のあらすじを作成してください。
「困難・対立・解決」のフレームワークを使い、人間ドラマに焦点を当ててください。
3. 入力内容の例
[プロジェクト背景]: 資金不足で開発中止の危機があった。社長と現場の意見が対立したが、顧客の一言で方向性が決まった。
1-2. 構成案・本文の執筆

切り口が固まったら、次はいよいよ文章化です。
ここで意識したいのは、「記者がそのまま記事にしやすい構成」になっているかどうか。
AIに構成づくりを任せることで、掲載される確率はぐっと高まります。
No.6 「逆三角形」の基本構成作成
- 目的:結論を最初に伝える、プレスリリースの王道フォーマットを一瞬で作る。
1. ロール設定
あなたはプレスリリース作成のプロフェッショナルです。
2. 指示内容
以下の[要素]を使用し、最も重要な情報から順に伝える「逆三角形」の構成案(見出し・リード・本文・補足)を作成してください。
記者がコピペしやすい構成を意識してください。
3. 入力内容の例
[要素]: 8月1日発売、新製品「涼感マスク」、特許技術の素材を使用、価格は3枚入り980円、全国のドラッグストアで販売。
No.7 フックとなる「リード文」生成
- 目的:冒頭の数行で記者の関心をつかみ、読み飛ばされるのを防ぐ。
1. ロール設定
あなたはYahoo!ニュースのトピックス編集者です。
2. 指示内容
この[プレスリリース内容]を要約し、多忙な記者が「おっ、これは」と手を止めるような、インパクトのある「リード文(導入文)」を3パターン作成してください(各150文字以内)。
3. 入力内容の例
[プレスリリース内容]: 地元企業と高校生が共同開発した、規格外フルーツを使ったクラフトコーラが完成。地域活性化を目指す。
No.8 社長・開発者の「コメント」作成
- 目的:記事に引用されやすい、熱量のあるコメントを用意する。
1. ロール設定
あなたはスピーチライターです。
2. 指示内容
[開発の想い]をもとに、プレスリリース内に掲載する「代表者のコメント」を作成してください。
形式的な言葉ではなく、情熱やビジョンが伝わる人間味のある言葉にしてください。
3. 入力内容の例
[開発の想い]: 日本の伝統工芸を絶やしたくない。若い人にも日常で使ってほしい。職人の技を世界に広げたい。
No.9 メディア向けQ&Aの作成
- 目的:記者が感じそうな疑問を先回りし、やり取りの手間を減らす。
1. ロール設定
あなたは慎重な性格のデスク(記事の責任者)です。
2. 指示内容
この[発表内容]に対して、記者がツッコミたくなる疑問点や懸念点を5つ挙げ、それに対する誠実で明確な回答(FAQ)を作成してください。
3. 入力内容の例
[発表内容]: 完全無人のAIコンビニエンスストアを都内に初出店。顔認証で決済を行う。
No.10 5W1Hのファクト整理
- 目的:基本情報の抜け漏れを防ぎ、内容の信頼性を高める。
1. ロール設定
あなたは几帳面な校閲記者です。
2. 指示内容
以下の[雑多な情報]を整理し、記事執筆に必要な「5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)」を箇条書きで明確にまとめてください。
不足している情報があれば指摘してください。
3. 入力内容の例
[雑多な情報]: 来月の15日にイベントやる。場所は渋谷の〇〇ホール。主催はウチの会社。参加費は無料だけど予約必要。有名ゲストも来るかも。
1-3. 推敲・ブラッシュアップ

原稿が一通り書けたら、次は仕上げのフェーズです。
ここでは、「自分目線」になりすぎていないかをチェックすることが重要になります。
AIにあえて厳しい役回りを任せることで、文章の完成度はもう一段階引き上げられます。
No.11 メディア視点の「ダメ出し」レビュー
- 目的:配信前に弱点を洗い出し、リリースの精度を高める。
1. ロール設定
あなたは数々のプレスリリースをボツにしてきたベテラン編集長です。
2. 指示内容
私が作成した以下の[プレスリリース原稿]を読み、記者視点で「興味を持てない点」「分かりにくい点」を厳しく指摘してください。
改善案もセットで提示してください。
3. 入力内容の例
[プレスリリース原稿]: (ここに作成した原稿全文を貼り付け)
No.12 専門用語の「翻訳」
- 目的:業界用語をかみ砕き、誰にでも伝わる文章にする。
1. ロール設定
あなたは「池上彰」さんのような、分かりやすい解説のプロです。
2. 指示内容
以下の[文章]に含まれる専門用語やカタカナ語を、中学生でも理解できる平易な日本語に書き換えてください。
意味が変わらない範囲でお願いします。
3. 入力内容の例
[文章]: 当社のSaaSは、API連携によりレガシーシステムとシームレスに統合し、DXをアクセラレートします。
No.13 インパクトワードへの変換
- 目的:無難な表現を、見出し映えする言葉に磨き上げる。
1. ロール設定
あなたはキャッチコピー制作の天才です。
2. 指示内容
以下の[平凡な表現]を、メディアの見出しになりやすい「数字」や「パワーワード」を含んだ表現にリライトしてください。
煽りすぎず、事実に基づいた範囲で行ってください。
3. 入力内容の例
[平凡な表現]: とても軽い素材を使っているので、長時間持っても疲れません。たくさん売れています。
No.14 SEOキーワードの最適化
- 目的:検索経由での露出を増やし、記事の寿命を延ばす。
1. ロール設定
あなたはSEO(検索エンジン最適化)コンサルタントです。
2. 指示内容
今回のテーマである[キーワード]において、検索ボリュームが大きく、かつプレスリリースに盛り込むべき「関連キーワード」を5つ挙げてください。
また、それを自然に含めたタイトル案も作成してください。
3. 入力内容の例
[キーワード]: リモートワーク、腰痛対策。
No.15 タイトルのA/Bテスト案
- 目的:開封率を左右するタイトルを比較し、最適解を探る。
1. ロール設定
あなたは行動心理学に詳しいWebマーケターです。
2. 指示内容
このリリースの開封率を最大化するために、「意外性重視」「数字重視」「ベネフィット重視」の3つの切り口で、魅力的なタイトル案をそれぞれ作成してください(30文字以内)。
3. 入力内容の例
[リリース概要]: 規格外の野菜を使った、子供向けの野菜嫌い克服カレーを発売。
1-4. 配信・アプローチ戦略

プレスリリースは、配信して終わりではありません。
「どう届けるか」まで設計してこそ、広報の仕事です。この段階でも、AIは心強いサポーターになってくれます。
No.16 記者への個別アプローチメール
- 目的:一斉配信ではなく、「あなたに届けたい」気持ちが伝わるメールを作る。
1. ロール設定
あなたはメディアリレーションズの専門家です。
2. 指示内容
[媒体名]の記者に対して、今回のプレスリリースを個別に送付するための「メール文面」を作成してください。
なぜその媒体に送るのかという「必然性」と、相手への「敬意」を込めてください。
3. 入力内容の例
[媒体名]: Webメディア「Business Insider Japan」。働き方改革の特集をよく組んでいる。
No.17 メール件名の開封率アップ
- 目的:受信トレイの中で埋もれない件名を作る。
1. ロール設定
あなたはダイレクトレスポンスマーケティングのプロです。
2. 指示内容
多忙な記者が受信トレイを見た瞬間、思わずクリックしてしまうような「メール件名」を5つ提案してください。
【】などの記号を使い、視認性を高める工夫をしてください。
3. 入力内容の例
[内容]: 世界初の技術を使った、完全防水のビジネスシューズの発表。
No.18 SNS拡散用の要約作成
- 目的:SNSで自然に広がる投稿文を用意する。
1. ロール設定
あなたはTwitter(X)のインフルエンサーです。
2. 指示内容
このプレスリリースの内容を、Twitterで拡散されやすい140文字以内の文章に要約してください。
絵文字を適度に使用し、共感を呼ぶトーンにしてください。
3. 入力内容の例
[プレスリリース]: 社員全員が週休3日制を導入。給与は維持。生産性が20%向上した実証実験の結果。
No.19 取材依頼への想定問答
- 目的:突然の取材にも落ち着いて対応できるよう備える。
1. ロール設定
あなたはメディアトレーニングのコーチです。
2. 指示内容
プレスリリース配信後、テレビ局から電話取材が来たと想定します。
ディレクターから聞かれるであろう「鋭い質問」を3つと、それに対する「模範回答(15秒程度で話せる内容)」を用意してください。
3. 入力内容の例
[リリース]: 飲食店向けの配膳ロボットの導入事例。
No.20 次回に向けたPDCA分析
- 目的:今回の結果を次につなげ、広報の打率を上げる。
1. ロール設定
あなたはデータドリブンな広報マネージャーです。
2. 指示内容
今回のプレスリリースの結果([掲載数・反響])を踏まえ、良かった点と、次回改善すべき点を分析してください。
次のリリースで試すべき新しいアプローチも提案してください。
3. 入力内容の例
[掲載数・反響]: Webメディア3件掲載。大手紙は反応なし。SNSでは少し話題になった。
2. 複数プロンプトの複合利用の方法

プロンプトは、単体でも十分に力を発揮します。
ただ、組み合わせて使うことで、まるで「専属の広報チーム」がいるかのような動きが可能になります。
ポイントは、「広げて、整えて、届ける」という流れを意識することです。
2-1. 複合利用の基本原則
前の出力を次の入力として活用する
AIとのやり取りは、積み重ねが大切です。
企画段階で生まれたアイデアを、そのまま次の執筆段階の材料として使う。
このバトンリレーを意識することで、軸のぶれない一貫したプレスリリースが完成します。
体系的なフローの構築方法
「企画(No.1–5)」
→「執筆(No.6–10)」
→「推敲(No.11–15)」
→「戦略(No.16–20)」
この流れを頭に入れておいてください。
いきなり書き始めるよりも、まず企画を固める。
遠回りに見えて、実はこれが一番の近道です。
2-2. 初心者向けの複合利用の具体例
ここでは、「実際にどう組み合わせればいいのか」をイメージしやすいよう、具体例をご紹介します。
例1: 平凡なネタを「社会派ニュース」に昇華させる
活用プロンプト:No.3(社会潮流)→ No.6(基本構成)
- No.3を実行:
自社商品と「今のトレンド(例:SDGs、働き方改革)」を掛け合わせた企画案を出す。 - 出力の一部を選択:
もっともニュース性の高い切り口を選び、コピーする。 - No.6を実行:
その切り口を「要素」として入力し、リリース全体の構成を作成する。
単なる商品紹介ではなく、「今、報じる意味」があるリリースに仕上がります。
例2: 独りよがりな文章を「記者目線」に磨き上げる
活用プロンプト:No.7(リード文)→ No.11(ダメ出しレビュー)
- No.7を実行:
記者の目を引く魅力的なリード文(導入)を作成させる。 - 出力の一部を選択:
作成したリード文と本文を合わせ、原稿全体を用意する。 - No.11を実行:
「ベテラン編集長」の視点で厳しくチェックさせ、修正案をもらう。
客観的な視点が入り、プロが書いたような隙のない文章に仕上がります。
例3: 作成から個別の投げ込みまでを一気通貫する
活用プロンプト:No.2(ペルソナ定義)→ No.16(個別メール)
- No.2を実行:
自社のニュースを取り上げてくれそうな「ターゲットメディア」を特定する。 - 出力の一部を選択:
具体的なメディア名(例:日経MJ、〇〇Web)をコピーする。 - No.16を実行:
のメディアに向けて、なぜ送ったのかを伝える「個別アプローチメール」を作成させる。
「バラマキ」ではない、相手の心に響く「本気のメディアプロモート」が可能になります。
まとめ
プレスリリースにおいて、AIは単なる時短ツールではありません。
自社の魅力を客観的に見つめ直し、メディアに伝わる言葉へと変換してくれる、頼れるパートナーです。
事務的な作業はAIに任せて、その分の時間を「記者との関係づくり」や「次の面白い企画」に使ってみてください。
ぜひ、明日から最初の一本目のプロンプトを試してみましょう。
その一歩が、大きな掲載につながるはずです。

