はじめに
「数字は揃ったのに、どうまとめればいいのかわからない」そんなモヤモヤを抱えたことはありませんか。
データ分析の核心は、単に数値を並べることではなく、そこから“次の手”を見つけることにあります。
とはいえ、構成を考えたり、見せ方を工夫したりするうちに時間だけが過ぎ、肝心の考察に手が回らない…そんな経験もあるでしょう。
そこで頼りになるのがAIです。
分析の“相棒”として使えば、この壁を驚くほどスムーズに乗り越えられます。
- 複雑なデータを「伝わるストーリー」に変換
- コピペですぐ実戦投入できるプロンプト20選
- 分析結果を説得力ある提案につなげる応用テクニック
この記事を読み終える頃には、単なる数字の羅列だった素材が、「動く資料」へと姿を変えているはずです。
さあ、データを武器に変える旅を始めてみましょう。
1. 企画書作成を加速させるプロンプト20選
ここからは、明日からすぐ使える20個のプロンプトをご紹介します。
データ分析レポートの流れに沿って、相性の良いものを厳選しました。
1-1. データの解釈・インサイト抽出
まずは、数字の背景にある“意味”を読み解くパートです。
AIに壁打ち相手になってもらうことで、普段とは違う角度で分析できるようになります。
No.1 多角的トレンド分析
- 目的: データの変動要因を、複数の視点から洗い出す。
1. ロール設定
あなたは経験豊富なデータアナリストです。
2. 指示内容
以下の[データ傾向]について、なぜこのような動きになったのか、考えられる要因を「外部環境」「競合」「内部施策」の3視点から3つずつ仮説にしてください。
3. 入力内容の例
[データ傾向]: 3月のECサイト売上が前年比120%増だが、客単価は5%減少している。No.2 異常値の背景検知
- 目的: 特異なデータが示すリスクやチャンスを発見する。
1. ロール設定
あなたはリスク管理に強いビジネスコンサルタントです。
2. 指示内容
以下の[異常値データ]が発生した背景として、考えられる可能性を「ポジティブ要因」「ネガティブ要因」に分け、ビジネスへの影響が大きい順に5つ挙げてください。
3. 入力内容の例
[異常値データ]: 特定の地域（A県）だけ、web広告のクリック率が全国平均の3倍になっている。No.3 顧客セグメンテーション案
- 目的: データを切り分けるための最適な“軸”を探す。
1. ロール設定
あなたはマーケティング戦略のプロフェッショナルです。
2. 指示内容
以下の[ターゲットデータ]を分析する際、従来の属性（性年代）以外で有益な示唆が得られるユニークな切り口を5つ提案してください。
3. 入力内容の例
[ターゲットデータ]: サブスクリプション動画サービスの無料会員リストNo.4 相関と因果の整理
- 目的: 見せかけの相関に惑わされず、真の要因を見極める。
1. ロール設定
あなたは論理的思考に長けたデータサイエンティストです。
2. 指示内容
以下の[観測された事象]について、「相関関係」と「因果関係」を混同しないように注意しながら、論理的に説明できる仮説を3つ示し、検証に必要な追加データも提示してください。
3. 入力内容の例
[観測された事象]: アイスクリームの売上が伸びると、水難事故の件数も増えている。No.5 定性データの要約・構造化
- 目的: アンケートなどのテキストデータを、定量的に扱える状態に整える。
1. ロール設定
あなたは定性調査のスペシャリストです。
2. 指示内容
以下の[顧客の声]を読み込み、主な不満要因を3つのカテゴリに分類し、各カテゴリが全体の何割ほどか推測値も添えてください。
3. 入力内容の例
[顧客の声]: （アンケートの自由記述欄のテキストを貼り付ける）1-2. レポート構成・ストーリー設計
インサイトが揃ったら、それを相手に“伝わる形”へとまとめていきます。
AIの構成力がもっとも力を発揮する部分です。
No.6 結論ファーストの構成案
- 目的: 忙しい決裁者に、冒頭で要点を一瞬で掴んでもらう。
1. ロール設定
あなたは外資系コンサルティングファームのマネージャーです。
2. 指示内容
以下の[分析結果]を報告するため、結論（Executive Summary）→根拠→詳細データ→ネクストアクションの順でピラミッド構造のレポート案を作成してください。
3. 入力内容の例
[分析結果]: キャンペーンAは失敗だったが、特定の層（20代女性）には高い効果があった。No.7 課題解決型（Gap Analysis）構成
- 目的: 現状と理想のギャップを埋める提案をつくる。
1. ロール設定
あなたは事業改善の専門家です。
2. 指示内容
以下の[現状データ]と[目標データ]のギャップを埋めるため、「現状把握」「ギャップ要因分析」「解決策」「期待効果」の順にレポート構成案を作成してください。
3. 入力内容の例
[現状データ]: 月間リード獲得数 300件
[目標データ]: 月間リード獲得数 500件No.8 意思決定支援の比較構成
- 目的: 複数案の比較から、最適な選択肢を導く。
1. ロール設定
あなたは経営企画室のスタッフです。
2. 指示内容
以下の[分析内容]をもとに、A案とB案を比較するレポートの目次を作成してください。
各案のメリット・デメリット、コスト、リスクを比較し、最終的な推奨案を論理的に導いてください。
3. 入力内容の例
[分析内容]: 自社サーバーの増設（A案）か、クラウド移行（B案）かのコスト試算結果No.9 非専門家向けストーリー構成
- 目的: 専門知識がない相手でも、直感的に理解できる流れにする。
1. ロール設定
あなたはプレゼンテーションのコーチです。
2. 指示内容
データ分析に詳しくない役員向けに、以下の[複雑な分析結果]を、専門用語を使わず、比喩や身近な例を用いてストーリー構成にしてください。
3. 入力内容の例
[複雑な分析結果]: 重回帰分析の結果、説明変数Xの影響度が最も高く、P値も有意であった。No.10 PDCAサイクル促進構成
- 目的: 分析をやりっぱなしにせず、改善のアクションにつなげる。
1. ロール設定
あなたはプロジェクトマネージャーです。
2. 指示内容
以下の[実施結果]をもとに、「Plan（仮説）」「Do（実行内容）」「Check（検証結果）」「Action（改善案）」のフレームワークで構成案を作成してください。
3. 入力内容の例
[実施結果]: メルマガの開封率は目標達成したが、クリック率は目標未達だった。1-3. グラフ選定・説明テキスト作成
骨子が整ったら、次は各スライドの“中身”を磨いていく段階です。
適切な可視化と、要点がすっと伝わる文章が、レポート全体の質を大きく左右します。
No.11 最適チャート選定アドバイザー
- 目的: データの特徴に最も合うグラフ形式を選び出す。
1. ロール設定
あなたはデータビジュアライゼーションの専門家です。
2. 指示内容
以下の[伝えたいこと]を可視化するために、最も効果的なグラフの種類（棒グラフ、折れ線、散布図など）は何ですか？
理由とともに推奨案を2つ提示してください。
3. 入力内容の例
[伝えたいこと]: 自社製品のシェアが、3年前と比較して競合他社より伸びていること。No.12 スライドのリード文作成
- 目的: グラフを見なくても、伝えるべきメッセージが一目でわかる文章にする。
1. ロール設定
あなたは編集者です。
2. 指示内容
このスライドの[グラフデータ]から読み取れる最重要メッセージを、2行以内のリード文（要点文）にしてください。
解釈の余地を残さない“断定的な表現”を使ってください。
3. 入力内容の例
[グラフデータ]: 2023年の売上推移。下半期にかけて右肩上がりで成長している。No.13 専門用語の「超」翻訳
- 目的: 難しい専門用語を、誰でも理解できる平易な言葉に置き換える。
1. ロール設定
あなたは初心者向けのIT講師です。
2. 指示内容
レポートに含まれる以下の[専門用語]を、中学生でもわかるレベルに噛み砕いて説明してください。
3. 入力内容の例
[専門用語]: LTV（ライフタイムバリュー）、CAC（顧客獲得単価）、ROAS（広告費用対効果）No.14 インサイトの言語化
- 目的: 「何が起きたか」だけでなく、「そこから何が言えるのか」を明確に書く。
1. ロール設定
あなたはシニア・アナリストです。
2. 指示内容
以下の[事実]から導き出される「ビジネス上の示唆（インサイト）」を100文字程度で言語化してください。
状況説明にとどまらず、「だから何なのか（So What?）」を含めてください。
3. 入力内容の例
[事実]: 新規ユーザーの離脱率が、登録後3日目だけ急激に高くなっている。No.15 ダッシュボード要件定義
- 目的: 定常的にモニタリングできるダッシュボードの設計図を作る。
1. ロール設定
あなたはUI/UXデザイナーです。
2. 指示内容
以下の[KPI]をモニタリングするためのダッシュボード画面の構成案を作成してください。
画面の上部・中部・下部に何を配置すべきか、視線の流れを意識して提案してください。
3. 入力内容の例
[KPI]: 売上高、粗利率、在庫回転率、店舗別達成率1-4. 仕上げ・ブラッシュアップ
最後は、レポートの説得力を最大限まで高める仕上げの工程です。
批判的な視点を取り入れることで、どんな質問にも耐えられる“抜けのない資料”になります。
No.16 鋭いタイトルの生成
- 目的: 読み手の関心を引き、開封・閲覧される確率を高める。
1. ロール設定
あなたはニュースメディアの編集長です。
2. 指示内容
以下の[レポート内容]につけるタイトル案を10個作成してください。
「危機感を煽る」「数字で惹きつける」「ポジティブな未来を示す」など、トーンを変えて提案してください。
3. 入力内容の例
[レポート内容]: 残業時間の増加と社員のエンゲージメント低下の相関分析レポートNo.17 エグゼクティブ・サマリー作成
- 目的: 冒頭の短時間で、全体像と結論を理解してもらう。
1. ロール設定
あなたは優秀な秘書です。
2. 指示内容
以下の[レポート全文]の要点を整理し、5項目の箇条書きで「エグゼクティブ・サマリー」を作成してください。
決裁者が1分で意思決定できる内容にしてください。
3. 入力内容の例
[レポート全文]: （作成したレポートのテキストを貼り付ける）No.18 論理破綻チェック
- 目的: データの解釈ミスや論理の飛躍を事前に洗い出す。
1. ロール設定
あなたは論理学の教授です。
2. 指示内容
以下の[考察文章]について、論理の飛躍や、データに基づかない主観的な主張が含まれていないかチェックしてください。
修正すべき箇所とその理由を具体的に指摘してください。
3. 入力内容の例
[考察文章]: （チェックしたい考察文を貼り付ける）No.19 想定Q&Aの作成
- 目的: プレゼン時の厳しいツッコミに備えて“防御力”を高める。
1. ロール設定
あなたは批判的な視点を持つ投資家です。
2. 指示内容
この[レポートの結論]に対して、データの信憑性や分析手法について突っ込みたくなる質問を5つ挙げ、それぞれに対する冷静な回答案も作成してください。
3. 入力内容の例
[レポートの結論]: 既存事業を縮小し、新規事業へリソースを集中すべきである。No.20 ネクストアクションの具体化
- 目的: 「いい分析だった」で終わらせず、行動につなげる。
1. ロール設定
あなたは実行力のある事業責任者です。
2. 指示内容
レポートの締めくくりとして、明日からチームが取り組むべき[具体的なアクション]を3つ定義してください。
「誰が」「いつまでに」「何をやるか」を明確にしてください。
3. 入力内容の例
[分析からの結論]: Webサイトの問い合わせフォームの改善が必要。2. 複数プロンプトの複合利用の方法
単発でも強力ですが、複数のプロンプトを“つなげて”使うことで、AIは単なるツールから“伴走者”のような存在へと変わります。
ここでは、レポート作成をほぼ自動化に近づける複合テクニックをご紹介します。
2-1. 複合利用の基本原則
前の出力を次の入力として活用する
AI活用のコツは、いわば“バケツリレー”です。
分析プロンプトで出た「解釈」を、次の「構成プロンプト」にそのまま渡してみてください。
あなたがやることはコピペだけ。
情報の純度を落とさず、一気にアウトプットの完成度を高められます。
体系的なフローの構築方法
進め方の基本は、拡散（アイデア出し） → 収束（構造化） → 研磨（表現調整）という流れです。
いきなり完成形を狙わず、まずは素材を出し、次に骨組みを整え、最後に表現を磨く。
この手順が、遠回りのようで最も効率的です。
2-2. 初心者向けの複合利用の具体例
ここでは、前章のプロンプトをどうつなげると効果的なのか、具体例でイメージしやすくしていきます。
例1: 生データから結論ファースト構成を作る
活用プロンプト: No.1（多角的トレンド分析）→ No.6（結論ファースト構成）
- No.1を実行
売上などの傾向から複数の要因仮説を出す - 出力の一部を選ぶ
最も有力と思えるインサイトを1つ選択 - No.6を実行
選んだ要因を[分析結果]として構成に落とし込む
数字の羅列が、一貫したメッセージを持つ骨子に変わります。
例2: 難解な分析結果をわかりやすく翻訳する
活用プロンプト: No.14（インサイト言語化）→ No.12（リード文作成）
- No.14を実行
複雑な事実から“意味（So What?）”を抽出 - 出力の一部をコピー
インサイトの文章を選ぶ - No.12を実行
そのインサイトをスライド用の短文に変換
専門的な考察が、スライド冒頭の鋭い一言にまとまります。
例3: 提案の穴を見つけ、理論武装する
活用プロンプト: No.19（想定Q&A）→ No.18（論理破綻チェック）
- No.19を実行
自分の結論に対し“意地悪な質問”を出させる - 回答に困る指摘を選ぶ
特に鋭い突っ込みを拾う - No.18を実行
指摘を踏まえ考察文を修正し、矛盾をチェック
どんな質問が来ても動じない、強いレポートになります。
まとめ
データ分析レポートづくりは、とかく孤独で大変な作業と思われがちです。
でも、AIをパートナーとして使えば、そのプロセスは“発見の場”へと変わります。
大切なのは、AIに「正解」を求めるのではなく、一緒に「最適解」を探す姿勢です。
まずは気になるプロンプトを1つ、次の会議資料で試してみてください。
その小さな一歩が、あなたの仕事の評価を大きく変えてくれるはずです。
